個人事業主やフリーランスの人にとって、会社員のような「失業手当(雇用保険の基本手当)」がないことは大きな不安要素です。そんな中、「小規模企業共済」が退職金のような役割を果たし、失業時の生活費として活用できる制度として注目されています。
しかし、本当に「失業手当の代わり」になるのか、どんな点に注意が必要なのか、詳しく解説していきます。
小規模企業共済とは?
小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構が運営する「個人事業主や小規模な会社の経営者向けの退職金制度」です。月額1,000円〜7万円の範囲で掛金を積み立て、事業を辞めたときに共済金を受け取ることができます。
小規模企業共済の主な特徴
- 掛金は全額所得控除 → 節税効果が高い
- 共済金は事業廃業・退職時に受け取れる
- 受け取り方法が選べる → 一括・分割・併用
- 20年以上の加入で掛金総額以上を受け取れる
失業手当の代わりになるのか?
会社員の失業手当(雇用保険)との違い
比較項目 | 小規模企業共済 | 失業手当(雇用保険) |
---|---|---|
加入対象 | 個人事業主・会社経営者 | 会社員・アルバイト |
受給条件 | 廃業・引退など | 会社都合・自己都合退職 |
受給額 | 掛金に応じて変動 | 退職前の給与に応じて変動 |
受給期間 | 一括・分割で選択可 | 90〜330日 |
所得控除 | 掛金が全額控除 | なし |
小規模企業共済は「積み立て型」のため、支払った分が戻ってくる仕組みです。一方、失業手当は「掛金の一部を支払い、給付を受ける」形で、性質が大きく異なります。
つまり、「毎月の生活費として支給される失業手当」とは異なり、小規模企業共済は自分で貯めた資金を引き出す仕組みです。
小規模企業共済を失業時に活用する方法
1. 廃業したら「共済金A」を受け取る
個人事業主が廃業した場合、「共済金A」を受け取ることができます。これは一括でも分割でも受け取れ、長期加入していれば掛金総額以上の額を受け取れるメリットがあります。
2. 一時的に資金が必要なら「準共済金」
「準共済金」は、一定の条件(個人事業主の法人化など)で受け取ることができます。ただし、共済金Aと比べると受給額が減ることに注意が必要です。
3. 廃業せずにお金が必要なら「契約者貸付制度」
事業を継続しながら資金が必要な場合、積み立てた掛金を担保にお金を借りる「契約者貸付制度」を利用できます。最大で掛金総額の7〜9割を借りられるため、緊急の資金調達に役立ちます。
よくあるトラブル・間違えやすいポイント
廃業しないと共済金Aは受け取れない
「小規模企業共済に入っていれば失業手当のようにお金がもらえる」と誤解する人がいますが、廃業しない限り、共済金Aは受け取れません。 廃業の証明(確定申告の廃業届など)が必要です。
加入期間が短いと元本割れの可能性
20年以上加入すれば掛金総額以上を受け取れますが、短期間で解約すると元本割れする可能性があります。特に1年未満で解約すると掛金が返ってこないため、短期利用には向いていません。
すぐに受け取れない場合がある
申請から入金まで時間がかかることがあり、すぐにお金が必要な場合には向いていません。特に年度末や繁忙期は遅れるケースがあるため、計画的に手続きを進める必要があります。
契約者貸付制度は「借金」である
契約者貸付制度は、積み立てたお金を借りる仕組みですが、これはあくまで借金です。利息が発生するため、返済計画をしっかり立てる必要があります。
まとめ
私自身、個人事業主として小規模企業共済に加入しており、実際に契約者貸付制度を利用したことがあります。以下の点が特に重要だと感じました。
- 「失業手当の代わり」にはならないが、長期的な備えにはなる
- 短期利用は向いておらず、20年以上加入するとお得
- すぐに現金が必要なら貸付制度も選択肢
- 節税効果が高く、将来的に事業を畳む予定なら有利
小規模企業共済は、失業手当のように定期的に支給されるものではありませんが、個人事業主の「退職金」や「廃業時の資金」として活用できる強力な制度です。長期的な視点で備えておくと、事業の安定や将来の安心につながるでしょう。