退職届を出した後に「やっぱり辞めない」は可能?

退職を決意し、退職届を提出したものの、「やっぱり辞めたくない」と考え直すことは珍しくありません。しかし、いったん退職届を出した後に撤回できるのかどうかは、法律上や会社の対応によって変わってきます。本記事では、退職の撤回が可能かどうかのポイントや、よくあるトラブル、実際に撤回する際の注意点について詳しく解説します。

退職届を出した後の撤回はできるのか?

退職の撤回は基本的に「会社の承諾」が必要

結論から言うと、退職届を提出した後に「やっぱり辞めません」と言っても、会社が認めなければ撤回することはできません。
退職は「労働者の一方的な意思表示」で可能ですが、それを取り消すことは簡単ではありません。

退職届と退職願の違い

退職の撤回が可能かどうかは、提出した書類の種類にも影響されます。

  • 退職願:会社に対して「退職を希望する」意思を伝えるもの。会社が承諾する前であれば、撤回できる可能性が高い。
  • 退職届:労働者が「退職することを確定的に通知する」書類。基本的に提出した時点で撤回はできない。

退職届を提出した場合、会社が受理した時点で契約上の「退職の意思表示」が成立するため、撤回するためには会社の了承が必要になります。

退職撤回が認められるケース

会社が了承してくれる場合

会社が「引き続き働いてほしい」と考えている場合、退職撤回を認めてくれることがあります。特に以下のような場合は、受け入れられる可能性が高いです。

  • 会社が人手不足で、すぐに代わりの人員を確保できない
  • 退職届を提出したばかりで、まだ業務の引き継ぎが進んでいない
  • 上司や経営陣が、退職撤回を前向きに考えている

この場合、退職の撤回が正式に認められるよう、書面で撤回の意思を伝えると安心です。

退職の意思表示が「錯誤(間違い)」によるものだった場合

民法では、本人が「重大な錯誤」によって意思表示をした場合、それを取り消すことができると定めています。
例えば、次のような状況なら撤回の余地があります。

  • 強いストレスや精神的動揺の中で勢いで退職届を出してしまった
  • 上司に強く叱責され、冷静な判断ができない状態で提出した
  • 「とりあえず出せ」と言われて提出したが、詳細を理解していなかった

ただし、この主張が認められるかどうかはケースバイケースで、裁判で争っても撤回が認められないこともあるため、慎重に対応する必要があります。

退職撤回が難しいケース

会社がすでに退職を受理し、手続きを進めている

会社が退職届を正式に受理し、すでに退職手続きが進んでいる場合、撤回は難しくなります。例えば、

  • 退職日が確定し、社内の人事システムで処理されている
  • 後任者の採用が決まっている
  • 社内や取引先に退職の事実が伝えられている

このような場合、会社にとっても撤回を認めることで混乱が生じるため、ほとんどの場合は拒否されます。

会社側が「戻ってほしくない」と考えている

退職の意思を示した時点で、「この人はもう辞める」と会社が判断すると、たとえ撤回を申し出ても「一度辞めると言った人を引き止めるのは難しい」と考えられることが多いです。
特に、以下のようなケースでは、撤回が認められにくくなります。

  • 上司や同僚との関係が悪化していた
  • すでに退職に向けて準備が進んでいた
  • 会社がリストラを検討しており、退職をむしろ歓迎していた

退職撤回を申し出る際の注意点

早めに申し出る

退職撤回を考えたら、できるだけ早く会社に相談することが重要です。
退職日が近づくほど、会社側の準備が進んでしまい、撤回が難しくなります。

口頭だけでなく書面で伝える

「やっぱり辞めません」と口頭で伝えるだけでは、正式な手続きとして扱われないことがあります。
撤回の意思を明確にするために、書面やメールで伝えるのが望ましいです。

「撤回できなかった場合」のプランを考えておく

万が一、会社が退職の撤回を認めてくれなかった場合に備えて、次の準備をしておくと安心です。

  • 失業保険の手続き方法を確認する
  • すぐに働ける転職先を探し始める
  • 副業やフリーランスとして働く選択肢を考える

まとめ

退職届を出した後に「やっぱり辞めません」と思い直すことは誰にでもあり得ることですが、撤回できるかどうかは会社の対応次第です。

  • まだ手続きが進んでいないなら、早めに相談すれば撤回できる可能性がある
  • 会社が退職を受理した後や、後任者の採用が進んでいると撤回は難しい
  • 撤回できなかった場合に備えて、次のステップを準備しておくことが大切

退職は人生の大きな決断です。感情に流されてしまうのではなく、本当に辞めるべきかどうか、慎重に考えることが大切です。

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