個人事業主として働いていると、「万が一仕事がなくなったとき、雇用保険に入れたら安心なのに」と思うこともあるでしょう。しかし、雇用保険は基本的に「雇われている人」を対象とした制度であり、個人事業主がそのままの形で加入することはできません。
ただし、一定の条件を満たせば、個人事業主でも雇用保険の恩恵を受けられるケースがあります。本記事では、個人事業主が雇用保険に加入できるケースや、加入時の注意点、間違えやすいポイントについて詳しく解説します。
個人事業主は基本的に雇用保険に加入できない
雇用保険は、会社や事業主に雇われている「労働者」を対象とした制度です。そのため、個人事業主として自分自身が働いている場合、雇用保険には原則として加入できません。
しかし、以下のようなケースでは例外的に雇用保険に関わることができます。
個人事業主でも雇用保険に加入できるケース
従業員を雇用し、「労働者」として働く場合
個人事業主が誰かに雇われている形で働く場合、その勤務先が雇用保険の適用事業所であれば、労働者として雇用保険に加入できます。例えば、以下のようなケースです。
- フリーランスとして活動しながら、別の会社でアルバイトやパートとして働く
- 副業として会社勤務をしている(週20時間以上働いている)
この場合、勤務先の事業主が雇用保険に加入していれば、個人事業主としての立場とは関係なく、労働者として雇用保険に加入できます。
一人親方が「労働者性」を持つと判断された場合
建設業や運送業などで「一人親方」として働いている場合でも、発注元との関係が「労働者に近い」と判断されれば、雇用保険の対象になる可能性があります。具体的には、以下のような条件を満たす場合です。
- 仕事の指示を受けており、自分で仕事を選べない
- 勤務時間や業務内容が会社によって決められている
- 報酬が労働時間に応じて支払われている
このようなケースでは、個人事業主というよりも「雇用されている労働者」に近いと判断され、雇用保険に加入できる可能性があります。
個人事業主でも「労働者派遣事業」を行っている場合
個人事業主として、労働者を雇い「労働者派遣事業」を行っている場合、自分が雇用する労働者を雇用保険に加入させる必要があります。その際、自分自身も労働者としての条件を満たしていれば、雇用保険に加入できることがあります。
よくあるトラブルや間違えやすいポイント
「個人事業主でも雇用保険に入れる」と誤解するケース
「個人事業主でも雇用保険に加入できる」という情報を聞いて、誰でも簡単に入れると誤解する人が多いです。しかし、基本的には労働者としての条件を満たさなければ加入できません。「自分で仕事を受注している個人事業主」は対象外である点に注意が必要です。
副業の雇用保険加入に関する誤解
副業でアルバイトやパートをしている場合でも、雇用保険に加入するには「週20時間以上勤務していること」が条件になります。短時間の副業では雇用保険の対象にならないため、勤務時間をよく確認しましょう。
失業手当の受給資格を満たしていないケース
雇用保険に加入していたとしても、失業手当(基本手当)を受け取るには、「過去2年間で12カ月以上の雇用保険加入期間」が必要です。短期間のアルバイトや契約社員で加入しても、期間が足りなければ給付を受けられないことがあります。
まとめ
個人事業主として働いていると、雇用保険の重要性を強く感じることがあります。しかし、基本的には「雇われる立場」でないと雇用保険に加入できません。
もし、将来的に雇用保険を活用したいと考えているなら、次のような選択肢を検討するとよいでしょう。
- 副業で雇用保険適用の仕事を持つ(週20時間以上働く)
- 「労働者性」がある仕事かどうかを確認し、必要なら労働基準監督署に相談する
- 失業リスクに備えて、雇用保険以外の収入源を確保する(貯蓄や副業の準備)
雇用保険に頼るだけでなく、収入の柱を複数持つことも、個人事業主として安定した生活を送るために重要なポイントです。