退職金はまとまった金額を受け取れるため、「税金がどのくらいかかるのか?」と気になる人が多いです。実は、退職金には「退職所得控除」という優遇措置があり、一般的な給与よりも税負担が軽くなります。
しかし、計算方法を誤ると、思ったよりも手取りが少ないと感じたり、確定申告で追加納税が発生したりすることも。今回は、退職金の税金の仕組みと計算方法、注意点を詳しく解説します。
退職金にかかる税金の仕組み
退職金にかかる税金は、主に所得税と住民税です。ただし、通常の給与所得とは違い、退職所得控除や1/2課税といった優遇措置があります。
退職所得控除とは?
退職金のうち、一定額までは税金がかからない仕組みです。勤続年数が長いほど控除額も大きくなります。
退職所得控除額の計算式
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年)
例:勤続25年の場合
800万円 + 70万円 ×(25 – 20)= 1,150万円
この1,150万円までの退職金には税金がかかりません。
退職所得の計算方法
控除後の金額に対して、さらに1/2課税の優遇があります。
計算式:
(退職金 – 退職所得控除)÷ 2 = 退職所得
これに所得税率(累進課税)をかけて税額を計算します。
退職金の税額をシミュレーション
勤続25年・退職金1,500万円のケース
-
退職所得控除の計算
1,150万円(前述の計算) -
課税対象となる退職所得の計算
(1,500万円 – 1,150万円)÷ 2 = 175万円 -
所得税の計算(税率5%)
175万円 × 5% = 8.75万円 -
住民税の計算(税率10%)
175万円 × 10% = 17.5万円 -
合計税額
8.75万円(所得税)+ 17.5万円(住民税) = 26.25万円
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退職金の税金に関する注意点・よくあるトラブル
退職金に「退職所得控除」が適用されないケース
退職金として扱われるには、会社が「退職所得」として支払っている必要があります。退職金の名目で支払われても、通常の給与扱いになってしまうケースがあり、その場合は優遇措置が受けられず、全額課税対象となるので要注意!
退職金の支給方法で税金が変わる
退職金が一括支給される場合と、分割支給(企業年金など)される場合で税金の計算方法が変わります。分割支給は「雑所得」扱いとなり、退職所得控除が使えません。受け取り方法を選べる場合は慎重に考えましょう。
退職後の確定申告を忘れると損することも
退職金の税金は、源泉徴収で引かれているため通常は確定申告不要ですが、他に収入がない場合、確定申告すると還付を受けられる可能性があります。特に、退職後すぐに再就職しなかった人は要チェック!
退職金を「一時所得」と間違えないように
退職金は「退職所得」であり、「一時所得(懸賞金や保険満期金など)」とは別扱いです。一時所得の計算ルールで税金を考えてしまうと、負担を見誤ることになります。
まとめ
退職金の税金は、控除や1/2課税の仕組みを理解しているかどうかで大きく変わります。特に、勤続年数が長いほど控除が増えるので、退職のタイミングを調整するのも一つの手です。
また、会社の制度によっては、退職金の受け取り方法を選べる場合があるため、一括・分割の違いをしっかり確認しましょう。
退職金を手にする機会は人生で数回しかないため、事前に税金の知識を持っておくことで、手取り額を最大限に活かすことができます。