雇用保険には、スキルアップや再就職を支援する「教育訓練給付制度」があります。この制度を活用すれば、資格取得のための受講費用の一部が給付され、自己負担を軽減できます。しかし、利用できる資格には条件があり、誤解しやすいポイントも多いため、しっかりと理解しておくことが大切です。
ここでは、教育訓練給付制度の概要、対象となる資格、申請方法、そしてよくあるトラブルについて詳しく解説します。
教育訓練給付制度とは?
教育訓練給付制度は、厚生労働省が定める「教育訓練講座」を受講した際に、費用の一部が支給される制度です。対象講座を受講し、修了要件を満たすことで給付金を受け取ることができます。
対象者の条件
この制度を利用するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
一般教育訓練給付金(最大20%支給)
- 雇用保険に加入していた期間が通算1年以上(初回利用の場合は6ヶ月以上)
専門実践教育訓練給付金(最大70%支給)
- 雇用保険に通算2年以上加入していたこと(初回利用の場合は1年以上)
特定一般教育訓練給付金(最大40%支給)
- 雇用保険に通算3年以上加入していたこと(初回利用の場合は1年以上)
また、離職者でも、離職から1年以内であれば申請可能な場合があります。
どんな資格取得に使える?
一般教育訓練給付金(20%支給)対象の資格
比較的短期間で取得できる資格が対象となります。
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ビジネス系資格
- 日商簿記(2級・3級)
- ファイナンシャルプランナー(AFP・2級FP技能士)
- 宅地建物取引士(宅建)
- 秘書検定
- 貿易実務検定
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IT・デジタルスキル系資格
- ITパスポート
- 基本情報技術者試験
- マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
- Webデザイン関連資格
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語学系資格
- TOEIC(特定の対策講座のみ)
- 通訳案内士
- 英検準1級・1級
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福祉・医療系資格
- 介護職員初任者研修
- 登録販売者
専門実践教育訓練給付金(最大70%支給)対象の資格
長期間の学習が必要な専門的な資格が対象です。
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医療・福祉系
- 看護師
- 理学療法士・作業療法士
- 介護福祉士
- 保育士
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IT・デジタルスキル
- 応用情報技術者試験
- データサイエンス関連資格
- AI・プログラミングスクール
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建築・製造系
- 一級建築士・二級建築士
- 電気工事士
- 自動車整備士
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国家資格系
- 社会保険労務士(社労士)
- 中小企業診断士
- 税理士
これらの資格は、最大で授業料の70%(年間上限56万円)が給付されるため、費用負担を大幅に減らせます。
特定一般教育訓練給付金(40%支給)対象の資格
一般教育訓練給付金よりもキャリアアップ効果が高い資格が対象です。
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ビジネススキル・経営
- 中小企業診断士
- ITストラテジスト
- 1級建築施工管理技士
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福祉・介護
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 福祉住環境コーディネーター
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語学・貿易
- 通訳翻訳士
- 貿易アドバイザー
給付率が高めで、一定の専門性が求められる資格が多いのが特徴です。
申請の流れ
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対象講座の確認
- 厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で対象講座を検索
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受講前の手続き
- ハローワークで「教育訓練給付金支給要件照会票」を提出
- 受給資格を確認
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講座の受講
- 指定された期間内に受講・修了する
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修了後の申請
- 修了証明書・領収書をハローワークに提出
- 給付金を受け取る
よくあるトラブルと間違えやすいポイント
受講前に手続きをしなかった
給付を受けるには、受講前にハローワークで申請が必要です。事前に手続きをしていないと、受講後に申請しても給付されません。
すべての資格が対象ではない
資格そのものではなく、厚生労働省が認定した「指定講座」の受講が条件です。同じ資格でも、対象外のスクールで受講すると給付金をもらえません。
途中で受講を辞めると給付されない
給付金は「講座を修了する」ことが条件です。途中で辞めると、支給対象外になります。
申請期限を過ぎてしまう
修了から1ヶ月以内に申請しないと、給付金を受け取れません。
まとめ
教育訓練給付制度を活用すれば、スキルアップしながら費用負担を減らせるので、転職活動の強い味方になります。しかし、事前申請や対象講座の確認など、細かいルールがあるため、事前の準備が重要です。
特に「雇用保険の加入期間」「講座の指定」「申請期限」をしっかり確認しておかないと、せっかく受講しても給付金を受け取れなくなることがあります。
再就職やキャリアアップを考えているなら、まずはハローワークで相談し、自分に合った資格取得のチャンスを活かしましょう!